映画は、長いあいだ、庶民にとってかけがえのない娯楽のひとつでした。日本では、昭和20年代から30年代頃が映画館の黄金期といえます。それがやがてTVにその座をうばわれ、さらに1980年代後半に登場したレンタルビデオが普及するにつれて、ますます映画館から観客の足は遠のいていきました。

そんな映画館がそれまでとは違う形で復活の道を模索し始めたのは、1990年代に入ってから。

アメリカ発祥のシネマコンプレックスが郊外から徐々に首都圏へと広がっていき(余談ですが、このシネコンの普及の過程は、かつてのファミリーレストランの変遷によく似ています)、ミニシアター(初期はアートシアター)と呼ばれるいわゆる映画ニッチをターゲットにした映画館がポコポコ作られるようになりました。

これらの現象を総合して考えると、次のような事実が浮かび上がってきます。一つには、時代の移り変わりとともに、人びとの好みが極度に細分化(ある種のオタク化)し、観たい映画を好きなときに好きなように観る、という主体的な鑑賞態度に拍車がかかったこと。これは、CS放送、デジタル放送の到来によるTVの多チャンネル化が進行した現在では、より明確に実感できることではないでしょうか。

また一方では、前段と矛盾するようですが、人びとは皆それほど映画に主体的な関心を寄せるわけでもなく(だってほかにたくさん娯楽があるから)、費用をかけて大々的に宣伝されるメジャー作品に人気が集中するようになったこと。それがひいては、大劇場やシネコンのプログラムを平板で変わり映えのないものにしてきたということ。

そう考えると、映画という歴史ある芸術・娯楽文化が映画館という空間をつうじて生き残っていくためには、考察と議論を重ねていかなければならない問題が山積みであるということに気づかされます。

この先、映画館はどこへ向かうのでしょうか。



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